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【ROUND SQUARE】金沢イベントレポート ー まとまらない街で、つながる場をつくる意味

「円から生まれる、学びと出会い、化学反応を」

その場にいるゲストも参加者も、ビジネスを実践する/していく人同士が横並びになり、対話のなかで共に考え、つながるオフラインイベント「ROUND SQUARE」。

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これまで、蔵前や福岡で対話の場を企画してきたROUND SQUARE。石川県・金沢市にある「Books Under Hotchkiss(BUH)」で11月28日に「ROUND SQUARE in Kanazawa」が開催された。

今回は「金沢の再編集」というテーマで、ゲストトークや参加者同士でワークショップを進めながら、金沢における地域資源や地域らしさを伝えるデザインについて考える場となった。

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BUHは、金沢21世紀美術のすぐそばにある「アーティストの頭の中が覗ける」本屋さん。イベント会場は、2Fギャラリースペースを利用した。

「Squareの共同創業者の一人は、ガラス工芸作家でした。個人事業主で、カード決済に対応できずに商品販売ができなかった自身の苦い経験から『売ることと買うこと—ビジネスをもっと簡単にしたい』という想いが生まれ、現在につながっています」

広報・時松からSquareについて共有され、「ROUND SQUARE in Kanazawa」はゆるやかに幕を開けた。

久松陽一さん(右)、中西研大郎さん(中央)、大見謝将伍さん(左)。
久松陽一さん(右)、中西研大郎さん(中央)、大見謝将伍さん(左)。

ゲストは、過去にTOWN SQUAREにも登場した[g]iftの中西研大郎さんと会場となったBUHの久松陽一さんのお二人。モデレータは「働き方・暮らし方」をテーマに日本各地に出向き、メディア運営や移住促進プロジェクトに関わっている大見謝将伍さん。

参加者の世代や興味関心はさまざま。たがいに自己紹介し合うなか「これからものづくりで商いをはじめるので、ヒントを得るために来た」「普段は富山にいるので、金沢にはどんな商いをしている人がいるのか関心があり参加した」のような声があがった。

テーマに合わせて、それぞれの関心を共有しあう。Square加盟店の参加者からは「プロダクトの使い方をもっと知りたい」という声もあった。
テーマに合わせて、それぞれの関心を共有しあう。Square加盟店の参加者からは「プロダクトの使い方をもっと知りたい」という声もあった。

ゲストトークは、「どのような経緯で、金沢で商いをはじめたのか」という大見謝さんからの問いかけに対して、中西さん、久松さんがそれぞれの活動も踏まえながらスタートした。

2015年にオープンした、北陸三県の工芸品や食品を扱うセレクトショップ[g]iftをプロデュースする株式会社芸藝の中西さん。商いのはじまりは「園芸」で、工芸やアートのエキシビションのコーディネートに携わっている。

「[g]iftでは、将来的にものづくり(オリジナル商品)を考えています。事業を進めていくためには、地域はもちろんお客さんからの信頼が必要です。その信頼のために、商いとして継続していけるために日々奔走しています」(中西さん)

「はたらこう課では、起業を後押しする『コアキナイト』のような働き方に焦点を当てたイベントを行っています。若手起業家たちと出会うなかで、『自分らしく、自分のできる範囲で、好きなことをやる』のが商いなのだと感じています」(久松さん)
「はたらこう課では、起業を後押しする『コアキナイト』のような働き方に焦点を当てたイベントを行っています。若手起業家たちと出会うなかで、『自分らしく、自分のできる範囲で、好きなことをやる』のが小商いなのだと感じています」(久松さん)

2015年に金沢に移住し、広告企画制作会社「Hotchkiss」金沢支社とBUHの立ち上げに参加した久松さん。現在はアートディレクターとして、金沢市の起業支援のPRプロジェクト「はたらこう課」に携わるなど、企画から制作、場づくりまで幅広い「地域」と「クリエイティブ」を組み合わせる取り組みを石川県内で進めている。

「自治体のまちづくりや、鈴木大拙館のような文化施設のプロモーションに携わっています。『新たにつくる』というよりも、『もっとこうしたらよくなる』をクリエイティブでお手伝いしてます」(久松さん)

ゲストのお二人は「ものづくりをする」立場ではなく、すでにある地域のものをプロデュース、あるいは、デザインやプロモーションする立場で、今回のテーマ「金沢の再編集」を考えるヒントを提供してくれた。

「再編集」の視点から、「金沢らしさ」の伝え方を考える

「ビジネスやブランドは人にくっつくもの。だからこそ、少人数に小商いらしさがあると思います。少人数のチームの強みは、個人が主体的に仕事に取り組む環境にあることです。[g]fitや姉妹ブランドのボタニカルショップ[g]loveが5人程度で運営しているように、小商いを束ねた会社を目指しています」(中西さん)
「ビジネスやブランドは人にくっつくもの。だからこそ、少人数に小商いらしさがあると思います。少人数のチームの強みは、個人が主体的に仕事に取り組む環境にあることです。そのため、芸藝では、[g]fitや姉妹ブランドのボタニカルショップ[g]loveも少人数で運営しており、「一人一ブランド」を背負えるくらいの、小商いを束ねた会社を目指しています」(中西さん)

モデレータとゲストを交えてのクロストークへ。「そもそも、プロデュースや情報発信は必要はなのか」「金沢が抱えている課題は何なのか」に触れながら、「金沢の再編集」というテーマを掘り下げていく。

「食」「文化」「工芸」と、金沢は地域資源が豊富な街である。そのため「起業のしやすさは金沢らしさの一つです。とはいえ、金沢は『いいものをつくれば、勝手に売れる』という考えがいまだ根強いように思います。地域資源の豊富さに満足しがちなのかもしれません」と久松さんは指摘する。

Iターン移住者である自身のこれまでの経験を踏まえながら、地域を俯瞰し「金沢らしさ」を見出した上で、その芯の部分を編集して、情報発信することを大切にしているという。

配布されたROUND SQUAREオリジナル冊子には、メモ欄(自由帳)がついている。ゲストや参加者同士の話から、印象に残った言葉や自身がトークを踏まえて考えたことを記していく。
配布されたROUND SQUAREオリジナル冊子には、メモ欄(自由帳)がついている。ゲストや参加者同士の話から、印象に残った言葉や自身がトークを踏まえて考えたことを記していく。

「金沢は新幹線が開通したこともあり、情報発信に手をかけずともモノが売れてしまう状況に今なっているんです。しかし、それがずっと続くとは思っていません。

一般消費者向けにわかりやすい”金沢らしさ”を前面に出した商品が増えてきましたが、果たしてそれだけで良いのでしょうか。将来的なことも見据えて、金沢の良さをちゃんと理解してくれる人に、金沢の”本物”をきちんと届けるための発信が大事になると思います」(中西さん)

ゲストから抽出された「金沢らしさ」というキーワード。その“らしさ”を伝えるために「デザインはどう必要なのか」という問いに対しても意見が交わされた。

「現代のライフスタイルにおいて何を求められているのか、そのニーズを汲み取れてないメーカーさんはいます。売り場のことや消費者のニーズを汲み取りながら金沢らしい商品をつくっていくことが、私の立場からできるデザインだと思っています」(中西さん)

つくり手と買い手の間をつなぐ客観的な立場から、「表面的な、装飾的なものではないデザイン」のあり方について語られた。

「普通のものが普通に売れるようにする。そのために、価値の棚卸しというか、情報を整理をした上で『そのままでもいいよね』と伝えることもデザインの手法ですよね」(久松さん)

外国人目線で「もう一泊」、街の魅力をつなぎ合わせる

ワークショップでは、ゲストもグループに入り、参加者と一緒になってアイデアを練っていった。
ワークショップでは、ゲストもグループに入り、参加者と一緒になってアイデアを練っていった。

ワークショップでは、ゲストの話をもとに参加者がアイデアを広げていく。「どんな地域資源があるか」「どんな編集をしたいか」「どんな小商いができそうか」という問いに対して、個人とグループワークで考え、最後はグループごとに発表するという流れに。

ゲストハウス勤務の参加者がいたグループからは、現場のニーズを活かしながら外国人をターゲットにした案が発表された。

「一泊の滞在で金沢に満足してしまう外国人観光客は多いんです。ゲストハウスが案内窓口になって、旅行情報誌に載っていないそれぞれの趣味嗜好に合った観光ルートを紹介できれば、『もう一泊したい』と思える地域になると思うんです。滞在が増えれば食を体験する機会も増えます。そのときに、リーズナブルな地元の食を宿がつなげられるような仕組みをつくりたいです」

金沢で「Good Neighbors Hostel」を運営している参加者。「外国人の方も気兼ねなくお買い物や飲食ができるために、現金以外の支払い方法を提示することで彼らが安心して滞在できるようになるはず」といったコメントもあった。
金沢で「Good Neighbors Hostel」を運営している参加者。「外国人の方も気兼ねなくお買い物や飲食ができるために、現金以外の支払い方法を提示することで彼らが安心して滞在できるようになるはず」といったコメントもあった。

「食」について、他のグループからも「地元のシニアから料理と歴史を学びながら、交流が生まれるシェアキッチンをつくるのはどうか」「金沢の『食』は、素材だけでなく料理人の基準値が高い」などさまざまな声があがった。

それらを受け、モデレータの大見謝さんからは、まち全体のコンテンツを宿としてつなぎ合わせた「HAGISO / hanare」の話を踏まえつつ「すでにあるものの視点や評価の仕方を変えるのも、再編集の一つかもしれないですね」と、他の地域の事例などを踏まえながら「金沢で実践できることは何かをみんなで考えていきたいですね」とコメントした。

企画や発信につながる、地域資源の組み合わせ方

過去に九谷焼がガンダムとコラボレーションしたように、「『地域資源×〇〇』の形のような組み合わせ方で新しいものが生まれるかも」と語ってくれた参加者も。
過去に九谷焼がガンダムとコラボレーションしたように、「『地域資源×〇〇』の形のような組み合わせ方で新しいものが生まれるかも」と語ってくれた参加者も。

近隣の小松市からの参加者は「小松には歌舞伎や自衛隊など、歴史を掘り下げるとさまざまな地域資源があるんです。それらを金沢のものと対決させてみたい」という地域と地域をつなぎ合わせる案も出た。

「対決」という考え方をヒントに、ものづくりをしている参加者からは次のような声もあがった。

「金沢の地場産業の『工芸』の視点で考えてみると、普段は仲が良い漆屋と陶芸家が、あえて技術を競い合う祭があると面白いかもしれません。違った立場の職人さんたちが力を合わせることで、今までにないものすごいエネルギーが生まれると思うんです」

そんな個性的なアイデアに、会場には笑いが溢れるようなシーンも。ゲストの久松さんから「金沢という地域ではなく、それぞれの興味を惹くような仕掛けをもとに、金沢に訪れるきっかけをつくるための発信が必要かもしれませんね」とセッションをまとめてくれた。

「つながっているようで、つながっていなかった」をつなげる場づくりから

地域資源を再考するという意味で、[g]iftの「県花」をモチーフにしたポストカード<span style=

金沢の地域資源を見て自分の地元を見直す機会があった人、これからの商いづくりのための学びを得た人など、Iターン、Uターンという立場、世代、職業が異なる15人が集まっていれば、参加者の感想も違っていた。

ゲストの中西さんは「金沢はまとまりがない」ということを話の中で触れていた。コンパクトにまとまっている街にも関わらず、つながっているようでつながっていない人同士が多いとのこと。そうした意味で、「商いやものづくりをテーマに、それぞれの想いや考えを共有しながら人がつながる場をつくることが、金沢の再編集を実践してくために必要かも」といった参加者からの感想も。

平日の夜にも関わらず満席だったイベントは、閉幕後も会場の熱がなかなか冷めず、参加者やゲストの交流は続いた。
平日の夜にも関わらず満席だったイベントは、閉幕後も会場の熱がなかなか冷めず、参加者やゲストの交流は続いた。

Square加盟店の多くは、スモールビジネスを営んでいる事業者である。ROUND SQUAREでは、彼らが培ってきた経営の学びを共有し、新たなつながり、アイデアが育つ場を、全国各地でも生み出していきたいと考えている。

次のROUND SQUAREでは、どんな経営者が集まり、商いについての話が行われるのだろうか。

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文:下山 和希写真:山田 康太

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