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【商いのコト】コミュニティの独自性

二人の職人が語る「場づくり」(2)
前回記事では「築30年の商業ビルの7階と屋上をリノベーションして作った大人の秘密基地」Rockhills Garden(ロックヒルズガーデン)、「築22年の事務所ビルを滞在型複合ホテルにコンバージョン」した ON THE MARKS(オンザマークス)それぞれの「設計のこだわり」を中心に話を聞いた。今回は、それぞれの場の核となる部分、「場をその場たらしめるもの」にフォーカスした。

Rockhills Garden 渡邉さん

独立してFireplaceという会社を興して、一つめの事業としてRockhills Gardenを始めたとき「なんで川崎なの?」という質問を時々されたんですが、そもそも場所ありきでスタートしていないんですよね。私には不動産に関する知見がありませんから、この場所なら儲かる、儲からない、で場を選べない。川崎にRockhills Gardenを起ち上げたのは、「ビルの持ち主が高校の水球部の先輩で、彼に屋上と7階を使ってみないか、とスペース活用の相談をいただいたから(笑)」。川崎に「場」を構えたのは人の縁、それに尽きるんです。

繰り返しになりますが、とにかく”縁”に恵まれてきた自分のキャリアが根底にあります。だから今後もそれを「核」として、場に繋がるコミュニティを広げていきたいですね。

「都会の隠れ家で屋上キャンプ」(写真提供 Rockhills Garden)
「都会の隠れ家で屋上キャンプ」(写真提供 Rockhills Garden)

会社はそこにいる人が均質化しやすい —— ここでは「普段ない出会い」を生み出したい

前職で「地域活性」や「コミュニティデザイン」に関わる仕事をさせていただくなかで、例えば、漁師さんと漁業の現場でお会いする体験などを通して強く実感したことがあります。それは、僕が勤めていたような、いわゆる「都市圏にある大きな企業」にいると、ライフスタイルもキャリアも均質化していく、ということです。

仕事に向き合う価値観も、お金の稼ぎ方も似通っている。同じ言葉でわかり合える環境は非常に居心地が良いのですが、反面、「都市圏にある大きな企業」の外の世界を知らない。「全く違う世界を生きている人」との接点が限られている。これって、想像もしなかったような新しい出会い、新しい繋がり、化学反応的なことは生まれにくい環境ということです。だから、自分が「場」を作ったら「普段は異なるコミュニティに属している人同士」を同じ場に放り込みたいなって考えていました。一番やりたかったことは、地域と都市をかき混ぜること。

例えば、Rockhills Gardenの屋上では、定期的に東北の若手漁師さん(フィッシャーマンジャパン)とのコラボイベント、「フィッシャーマンBBQ」を開催しているのですが、お客さまの大半は、都市圏で働くオフィスワーカー。来てくださる理由は人それぞれで、震災復興の文脈で漁師さんを心から応援したい人もいれば、、産地直送の極上の魚介類を食べたくて来る人もいる。イケメンの漁師さんに会いに来られる方もいます(笑)。。目的は違うけど、同じ「場」に集まっている。ビルの屋上で、都市と地域がごちゃ混ぜになっている。物理的な場の真の面白さって、普段とは違う繋がりを生み出せる点にあると思うんです。

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若手漁師とのコラボレーションイベント(写真提供 Rockhills Garden)
若手漁師とのコラボレーションイベント(写真提供 Rockhills Garden)

今の時代、インターネットの普及により人と人がオンライン上でコミュニティを作ることは容易です。けれど、それはあくまで共感接点が顕在化していることが前提。だからこそ、新しい共感、繋がりを生み出すオフラインのコミュニティ、「リアルに膝をつきあわせて、同じ場所にいるつながり」がすごく大事になってくると考えています。

つなぐ人となり、場で化学反応を起こしていく

「場づくり」に携わる身として、僕は「ヒトとヒトをつなぐ人」で在りたい。これまでの経験から、つなぎ方のコツというか、人と人のあいだの「共感接点」の見つけ方や作り出し方みたいなものは何となく心得ているつもりです。抽象的な表現かもしれないですが、"縁"で作られた箱(場)に、自分の周囲に集まる多種多様な繋がり(共感接点)を放り込んでいきたいと思ってます。そして、その際には、出来るだけ「普段はない出会い」を作り、場から価値を産み出していきたいです。

(写真提供 Rockhills Garden)
(写真提供 Rockhills Garden)

ON THE MARKS 吉岡さん

ON THE MARKSの「要」は地域とのつながりです。もともとON THE MARKS単体で稼働しても、あまり意味がないと思っているからです。この地(川崎)で外国人旅行客をメインターゲットにした宿泊施設を経営することは、今の時点では相当なチャレンンジですよね。宿泊業だけで無く川崎の街も売り込んでいかないと成り立たないんです。

「ローカル」で人とつながることの価値

最近全国的に、より「ディープ」なところ——京都や大阪で言えば「南のエリア」——や地方に外国人の足がのびていますが、まさに「ローカルで人とつながることの価値」が高まっていることの表れだと思うんです。特に、訪日が2回、3回目の旅行者ともなると、ローカルを楽しみたいニーズは強い。川崎にも同じ可能性を感じています。川崎は羽田空港から電車で15分という好立地にあるので、ON THE MARKSは良い「入り口」、「玄関口」になることができます。ON THE MARKSに立ち寄れば地元の文化に触れられるし、何よりも地元の人とつながることができる。それを実現することがうちの「核」です。

ON THE MARKSは旅の「玄関口」(写真提供 ON THE MARKS)
ON THE MARKSは旅の「玄関口」(写真提供 ON THE MARKS)

つながるためのきっかけとして、例えばサイクリングやRUN イベントをやっています。告知はホテルのフロントとFacebookが主で、いまのところ参加者の多くは地元の人です。前回はなんと50人も集まりましたよ!

面白かったのが、チェックインしたばかりの宿泊客が興味を持ってくださって飛び込み状態で参加してくれたことがあるのですが、ランニングウェアを持ってきていなかったらしく、何と革靴とジャケットで走ってたんです(笑)。知らない人と一緒に走って、走ったあとの「ご褒美」のビール一杯を片手に仲良くなる。

クラフトビール(写真提供 ON THE MARKS)
ランニング後のビール(写真提供 ON THE MARKS)
ランニング後のビール(写真提供 ON THE MARKS)

今後は、よく高級ホテルなどで外国人旅行客用に置いている『ランニングマップ』のようなものを作って、海外からの宿泊客にもどんどん参加してもらい、地元の人と顔見知りになってもらう。ビール一杯飲んで顔見知りになったら、そのまま街の居酒屋に消えていく・・・そんな絵を想像しています。

実際、京都にアンテルーム(ホテル アンテルーム 京都)という施設があるんですが、ここは住宅とホテルが半分半分になっていて、1階にバーがついているんですね。そのバーでアンテルームの住人が飲んでいると、たまたま立ち寄った宿泊客と顔見知りになったりして。ローカルを楽しみたい宿泊客は、またその住人と話したくて帰ってきたりしてたんですよね。

場をつなぐ役割を担っていきたい

「場づくり」に携わる者としては、いまは「場をつくるひと」としての役割を担っていると思います。「場」のコンセプトを固め、ここの価値観や存在意義を定義し、発信する人。

ですが、将来的には「場をつなぐひと」になっていきたいです。僕は東京・調布出身で、川崎は多摩川を挟んですぐ隣だったにも関わらず、ON THE MARKSを始めるまではまったくこの街のことを知らなかったんです。今回ここに場をつくり、ここから自分のやりたいことについて発信し始めた途端、多くの川崎の人との素敵な出会いがありました。地元の人とのつながりが一気にできてきたんです。

旅人とローカルが出会う場所(写真提供 ON THE MARKS)
旅人とローカルが出会う場所(写真提供 ON THE MARKS)

今後は、自分自身も人と人をつなげる存在になっていきたいですし、更には場と場をつないでいきたい。旅人に各地の「場」の情報を手渡し、彼らが全国を巡る手助けをしたい。川崎をモデルケースにして、全国各地にそれぞれのON THE MARKSをつくることができれば、それらを拠点をとして、一気に各地をつなげることができますからね。


Rockhills Garden
神奈川県川崎市幸区中幸町3-8-1
044-589-4333

インタビュー:伊藤友里
文:つなぐ編集部
写真:小澤 亮
写真協力:Rockhills Garden/ON THE MARKS

最終回、【商いのコト】二人の職人が語る「場づくり」(3) では、二人の共通項である「旅行」「宿泊(ホステル、ゲストハウス)」「外国人観光客」というキーワードを中心にいよいよ対談。ゲストハウスを始めとし、宿泊施設の関係人口は爆発的に増えている。しかし、日本の人口が増えているわけではない。東京五輪の先、2021年以降、旅に関わる事業はどうなっていくのだろうか? どうあるべきなのだろうか?

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