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【 STORE STORY 】 ゆりかごから墓場まで、こころを動かす街の自転車屋さん

東京の世田谷区上馬に、ひときわ元気な4代目店主がいる「街の自転車屋さん」がある。95年の歴史を持つ小川輪業商会だ。
でも、小川輪業と店主の小川康浩さんの話の前に、「人」と「車輪」の歴史に少しふれたい。

今は当たり前に存在する「車輪」は、人類最古の最重要な発明の一つともいわれる。紀元前5000年程前、古代メソポタミアで「モノをもっとたくさん、遠くに、早く、運びたい」と強く考えた人たちが生み出したカタチだ。人の情熱って素晴らしい!

その「車輪」に地面からの衝撃を和らげるため、車輪の外周部分と中心をつなぐ放射状の「スポーク」というものが初めて取り付けられ、今日も街を走る自転車に見られる車輪の原型が誕生した。水車、歯車、プロペラやジェットエンジンなどもこの車輪から発展している。

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最初に原型が誕生して以来、少しずつ改良を重ねながらも、「車輪」の基本設計、姿形は変わらない。こんなに長い間、姿形が変わらないものなんてそう多くはない。不思議だ。改良を重ねながら人を支え続けるものこそ、革新的なのではと感じる。

この「車輪」と「スポーク」について、小川さんは言う。「自転車作りで最も重要な工程が『車輪とスポーク』なんです」。

小川輪業商会の理念:「ゆりかごから墓場まで」
小川輪業は、その名のとおり『自転車』という「輪」を扱う。

創業から100年近いこの街の自転車屋さんの理念について、4代目小川さんに聞いてみると、「私の父は『“ゆりかごから墓場まで”という言葉のように、輪業に携わる店としては、ベビーカーから車椅子まで扱っているのが究極の姿』と言っていました。私の代からマウンテンバイクをメインに扱っていますが、その人間がかかわる車輪に真面目に向き合うポリシーを受け継いでいます」と語る。

【小川輪業商会】創業大正10年(1921年)の小川輪業は、現在玉川通り沿いの上馬に店舗を構える。小川輪業は、自転車を製造する植村製輪商会として品川・高輪近辺でスタート。自転車が贅沢品から生活用品へ変化するとともに、時代もモノ作りから販売へと変わり、当時の植村製輪の販売部門であった小川輪業商会が事業を引き継ぐこととなる。 (写真:4代目小川康浩代表と当時の植村製輪商会の様子)

【小川輪業商会】創業大正10年(1921年)の小川輪業は、現在玉川通り沿いの上馬に店舗を構える。小川輪業は、自転車を製造する植村製輪商会として品川・高輪近辺でスタート。自転車が贅沢品から生活用品へ変化するとともに、時代もモノ作りから販売へと変わり、当時の植村製輪の販売部門であった小川輪業商会が事業を引き継ぐこととなる。
(写真:4代目小川康浩代表と当時の植村製輪商会の様子)

小川輪業4代目のマウンテンバイクへの挑戦
小川さんご本人は、会社員として社会人経験を積んだ後に「せっかく長く続けてきた実家の店を継ごう」と決意したという。

「自転車屋さんにとってもっとも重要なのは、車輪を作る技術。スポークという細い針金を編んで作っていくのですが、私はこれを小学校のときに父から学びました。実際に組み立ての作業をして店を手伝っていたので、自転車店としての最初で一番大切な修行は、すでに終わっていたんです」

また、当時は車に使われていたサスペンションや油圧のディスクブレーキが自転車にも投入されてきた時代でもあった。
「F1ブームの真っただ中で、私は車のアマチュアレースに参加していました。工具を使って車をいじることもしていて。そのときに得た知識を生かすことができたのも、この店を継ぐうえで大きなメリットだったと思います」

当初は日常生活で使うシティサイクル(通称ママチャリ)を扱う店としてスタートしたが、自分の技術的な強みを生かそうと考え、90年代後半ごろからはマウンテンバイクやBMXなど、20インチ径ホイールを持つ競技用自転車といったスポーツバイクに事業の方向転換をする。

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「ごっこ」から世界へ
「自分で体験する」ことを重視している小川さんは、スポーツバイクの協議会にも参加をし、そこで知り合った選手が店を訪れるようになり、彼らの自転車を整備するようになっていく。

「私はこれを『ワークスごっこ』と呼んでいるんです。『ワークス』とはプロのレースをしている人たちのこと。ワークスは華やかでかっこよく、作業にムダがない。アマチュアにとってはあこがれの存在です。街の自転車屋さんでも彼らの活動を真似してみたら、いろいろ勉強になるのでは、と思ってはじめたのがきっかけです」

それから縁がつながり、現在はマウンテンバイク・ダウンヒル部門のトップに立つ井本はじめ選手を筆頭に、これからの活躍が期待される選手たちを中心にサポートを行っている。

また、BMX部門では日本代表のメカニックとして世界選手権に帯同することも。「もう『ごっこ』がごっこを超えた活動になってきています」と小川さんは笑う。

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「ブーム」から「文化」へ
街の自転車屋さんでありながら、ママチャリ層のお客さまからプロ選手まで広く支持される小川輪業商会。人気の要因は、やはり長年向き合う品質への理念だ。

「工場から自転車屋にくる自転車って、実はタイヤなど全部外れている状態でお店に届くんですよ。それをお店で組み立てて、初めてみなさんが乗られる自転車になるんです。組み立てをきっちり行えば、自転車は確実に長持ちしますが、雑にやるとたった数ヶ月で壊れてしまう。さっきも言ったとおり『ゆりかごから墓場まで』向き合うことは、一台一台丁寧に組み立てて、長持ちする自転車を提供することが基本なんです」

今はスポーツバイク界で大活躍する小川さんだが、小川輪業商会のポリシーを原点に、自転車業界全体のことをつねに考えている。

「自転車のスタイルにもブームがあって、少し前はマウンテンバイクが流行り、今はロードバイクになって。でも、私はブームより『文化』になってほしいと思ってます。そのために、自転車屋さんは自転車に乗る楽しさをいかに提案できるかが求められます。だからこそ私たち自転車屋さんは、目先のブームに流されず、自分たちが扱う自転車に向き合って」

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その気持ちが人のハートを動かす乗りものを作り、それは大昔に車輪を発明した人類の「モノを動かしたい」という情熱となんら変わらないのかもしれない。

小川輪業商会 da bike kitchen
東京都世田谷区上馬2-1-1
Tel: 03-3421-7184

Square編集部
写真:Cedric Riveau

Square編集部はお店の知らせざる想いを応援します。
次回 【STORE STORY】は7月25日(土)投稿予定です!

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