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【 STORE STORY 】「透明」で凛として美しいーー機能性より気分の演出にこだわる明治創業の硝子店

「私たちはグラスを企画するとき、機能性をまったく考えていないんです」——東京都文京区、湯島駅から歩いて数分の『木村硝子店』で代表取締役専務を務める木村祐太郎さんが、意外な一言に戸惑う筆者に、ふっと微笑んだ。

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『木村硝子店』は明治43年(1910年)の創業で、現在は業務用のワイングラスやカクテルグラスを中心にガラス製品を取り扱っている老舗メーカー・問屋だ。もっとも、メーカーとは言っても自社工場は持たない。

「うちはワイングラスからお皿や灰皿、ミルクピッチャーなど、さまざまな商品を取り扱っています。工場には得意不得意がありますから、企画した商品の生産上の特性から得意な工場にお願いしたほうが良いものが作れる。国内に4軒、海外だとトルコ、スロバキア、ハンガリー、中国にお願いしている工場があって、私たちは商品開発や企画に専念することができます」(木村さん)

商品の多様さは創業当初から続くもので、創業者である木村さんの曾おじいさんもガラス製品なら何でも扱っていた。例えば、近くに東京大学があるという場所柄、フラスコやビーカーなど実験用のガラスを扱っていたことがあれば、金魚鉢を扱っていたこともある。

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「うちの商品は空気みたいな存在」

創業から100年がたった今、変わらずに脈々と受け継がれているのは、既成概念にとらわれない自由な発想だ。

「私たちはグラスを企画するとき、機能性をまったく考えていないんです。まずは艶やかさとか綺麗さとか、見た目や持ったときの質感を大切にしています。例えばバーで使われるときは、バーテンダーが扱いやすい機能的なグラスより、実際に飲まれるお客さんのためのグラスであってほしい。男性ならかっこよく、女性なら艶やか、おしとやかに。そんな気分で時間を過ごす様子をイメージしながら作っています。

よくお客さまから、『このグラスは何用ですか?』『こういう風な用途に使ってはいけないんですか?』と聞かれることがあります。何用かなんて気にせず、自由に使っていただければいいと考えています。イタリア、スペインにはワイングラスとしてコップを使うレストランがたくさんありますし、カクテルグラスを器として使用するレストランもあります」

一方で、『木村硝子店』がこだわりにしている商品の特徴がある。それは、「透明」であること。木村さんは、色が付いている商品はほとんど作っていないと話す。

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「ワイングラス、カクテルグラス、お冷や用のグラスもほとんどが透明。毎日使用する飲食店さんにとって色が付いたものやデコレーションされているグラスは、しばらくすると飽きてしまうんですよね。シンプルな商品は飽きが来ない、言わば空気みたいな存在であろうとしています」

 

グラスが味を意識させてくれる

数ある商品の中でも、木村さんが特に気に入っているものを聞くと、二つの商品を見せてくれた。スペイン・ヴィクリラ社のペンネというタンブラーと、イタリア・ボルゴノーヴォ社のワイングラスとして作られているコップ(ウィーン135)だ。木村硝子店では、オリジナル以外に木村さんが目利きした他メーカーの商品も輸入問屋として取り扱う。

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「ペンネはスペイン・ビルバオで作られているもので、本当にただのコップ。できが悪いんですがシンプルで何と言うか、愛らしく一番コップ感がある。そんなたたずまいが好きです。 ボルゴノーヴォのウィーン135は、こう見えてもワイングラスとして1970年代から生産され続けているコップで、ヴェネトやトスカーナあたりでは古くからこういったグラスでワインを飲んでいたようです。とろりとした厚手の飲み口や、しっくりと手に馴染む大きさ。作りは重厚でありながら、気軽な感じがいい。時代を経てこの形になったのでしょう。このグラスで飲むワインは本当に美味しいんですよ。味を特に意識させてくれるグラスです」

商品のほとんどは木村さんと社長の父・武史さんがデザインしているが、インハウスのデザイナーもいる。「父と私が企画するマス向けの商品とは違い、自由でそれぞれのこだわりを持って企画してもらっています。シンプルで新鮮。見る者を虜にするようなそんな商品です」と木村さんは話す。代々続く『木村硝子店』で、守りに入る様子は一切ない。

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「いま考えているのは、シンガポールへの進出です。シンガポールには世界で活躍しているシェフたちがたくさんいて、美味しい物が集まっています。だから、レストランのマーケットでうちが商売していけそうな見込みがあります」

東西交易の要衝として、さまざまな文化が交じり合うシンガポール。『木村硝子店』の伝統と革新が交わることでどんな化学変化が生まれるのか。今から楽しみだ。

木村硝子店
東京都文京区湯島3-10-7
Tel: 03-3834-1782

Square編集部
写真:Cedric Riveau

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