
量販店が立ち並ぶ秋葉原電気街、通称アキバ。そのアキバの終わりの末広町まで歩くと、大通りに面する一軒の店に掲げられた「新品・中古・ジャンク」という看板が目にとまる。
ここはパキスタン人と日本人の夫婦が営む中古カメラ店『Imtiaz’s Camera Market』。2009年に開店して以来、訪日外国人客が多く訪れる日本を代表する「電気の街角」だ。
「何の店なのかすぐ分かるように、店先にカメラを並べています。ほとんどのお客さまは、外観をパッと見て入っていらっしゃいます」
そう説明してくれたのは、店主であるMirza Imtiazさんと、奥さまの豊田信子さん。

店内に入ると、比較的新しいモデルのデジタルカメラから、今ではめずらしいフィルムカメラまで、壁一面に商品がぎっしりと並び、まるで宝探しをするような気分になる。
Imtiaz’s Camera Marketは、どこにも広告を出していないという。しかし開店から7年経過し、その間に来店したお客さんが母国に帰り「秋葉原でこんなお店があった」と口コミやSNSで宣伝してくれているのだとか。
店を訪れたお客さんは、どんなところに魅力を感じたのだろうか。
「商品に直接触れることができるところでしょうか。普通はガラスケースに入っているような高価なカメラでも、ある程度手に取って見ることができますから」
レンズについても、自分が持っているカメラとの相性を試したい場合、お店の表で試し撮りができるようにもしている。
「中古カメラなので新品とは違い、状態はさまざま。だからこそ、お客さまが十分検討し、納得してから購入できるような店づくりにしています」
店主のMirzaさんがじっくり相談にのってくれる、という点を気に入る人も多い。口コミでの評判を聞きつけた海外の人たちが、秋葉原に来た際に、わざわざ来店してくれるケースも増えてきているそうだ。
カメラの魅力は、ステータスとノスタルジー
「電気の街」であるためか、秋葉原は店がどんどん変わっていく。Imtiaz’s Camera Marketと同時期にあったお店も、多くが入れ替わってしまったという。お店が生き残れた秘訣について聞いてみると、「なぜでしょうね?」と笑いながらこう応えてくれた。
「理由のひとつは、みんなが求めてきてくれる商品をそろえているからだと思います。とにかく“Made in Japanがほしい”という人はいまだに多い。
日本のメーカーであり、生産工場も日本、という製品が人気。彼らが好きなものをリサーチして、品ぞろえをよくすることは意識しています」
海外のお客さんにとって、Made in Japanのカメラは一種のステータスなのか。
「お客さまが本国に帰ってから『日本製のすてきなカメラを買ったよ!』と自慢してくれると、日本のすばらしさが広まっていくようで、うれしく感じます」
また『カメラ』という普遍的な商品を扱っているのも、長続きできる要因のひとつと考えているそうだ。
「カメラは自分の記憶を映し出し、ノスタルジーにひたらせてくれる、生活に密着した精密機械。だからこそ流行ものと違い、すたれないのだと思います」
世界でも有数の電気街である秋葉原。ここで商売を続ける醍醐味を、ご夫婦はこう語った。
「秋葉原は世界の人が欲しがっているモノがじかに分かる場所。店は小さくても、人とモノの動きを実際にみることができるのは、何より楽しいですね」
東京・アキバ / Imtiaz’s Camera Market
東京都千代田区外神田3-16-14
Square編集部
文:鈴木はる奈
写真:Cedric Riveau
次回 5月23日(土)は、【STORE STORY】渋谷『Guitar Shop Hoochie’s(ギターショップ・フーチーズ)』
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