記事を検索

【商いのコト】[g]ift to local – 北陸のものづくりと観光の発信地点に

「金沢は、規模的にも一度訪れるだけで満足してしまう人も多い。だからこそ、次に行く地域のものを提示できる場所にしたいんです。すべての商品に物語があります。[g]ift から産地へ — 人の流れをどれだけつくれるかを意識しています」

つなぐ加盟店 vol. 12
[g]ift  (株式会社芸藝)中西 研大郎さん

「北陸三県のいいもの集めました」

「gift from Ishikawa, Fukui, Toyama(石川、福井、富山からのgift)」

シンプルだが、[g]ift の店名にはそうした意味がある。「 [ ] = 箱 」であり、箱に入れて大切なものを渡すように、gift の ”g” を [ ] で囲っているという。

[g]ift 中西研大郎さん(店前にて)。
[g]ift 中西研大郎さん(店前にて)。

「誰かへの感謝の気持ちなど、大切な想いは形にして渡したほうが相手に伝わりやすい。それに、『面白かった』『美味しかった』という会話のきっかけにもなりますよね。人と人の間にものがあることで、コミュニケーションは円滑になると思うんです。だから、コミュニケーションツールとしての “gift” であってほしいです」

人と人とをつなぐ大切さについて [g]ift の中西研大郎さんは話してくれた。

北陸のクラフトをもっと身近に

[g]iftに並ぶものは、器やアクセサリー、文具、食品など、三県から選りすぐった暮らしに馴染むものばかり。
[g]iftに並ぶものは、器やアクセサリー、文具、食品など、三県から選りすぐった暮らしに馴染むものばかり。

[g]ift は、「石川・福井・富山の北陸三県でつくられたもの、その地の魅力が伝わるもの」をコンセプトに、伝統工芸から生活雑貨、食品までを集めたセレクトショップだ。

[g]ift を立ち上げたのは金沢市出身の中西研大郎さん。園芸店と併設ギャラリーを運営する父親に育てられたという。大学の4年間、東京農業大学で園芸を学んだ。就職氷河期で就職先を見つけることが難しかったことから、卒業後、金沢にUターンすることに。

どんな仕事をするかも決めずに地元に戻った中西さんだが、ちょうど金沢21世紀美術館が開館するタイミングで、作家パトリック・ブランの「緑の橋」の展示サポートができる日本人が求められていた。植栽知識を買われ、中西さんは父の会社に身を置きながら社会人生活をスタートさせた。

2009年には父から会社を引き継ぎ、代表取締役となった。

実は、[g]ift の構想が動き始めたのはこの頃だ。きっかけは、父のギャラリー運営を通じて抱いた違和感にある。

「(ギャラリーでは)クラフト作家の作品を展示していました。しかし、展示期間も10日ほどと短く、いいものがお客さんが欲しいときに届けきれていない。きちんとお客さんと作品をつなぐための場所の必要性を感じていました」

ギャラリーほどに敷居を上げることなく、土地に根ざした『工芸』や『食』をとりまとめたセレクトショップをつくりたい — その思いが、[g]ift を立ち上げる第一歩となる。お店のオープンは2015年10月、北陸新幹線が開通する直前だった。

バラバラだった北陸の流通 – 商いとしての一本化

[g]ift があるのは、金沢21世紀美術館同様、広坂という地域。日本三大名園の一つ、兼六園へも徒歩10分以内という、多くの観光客が訪れる「金沢の玄関口」だ。そのため、セレクトショップでありつつもお土産屋としての顔も持つ。「gift」には “贈り物” と “お土産” の二つの意味がある。

お店は想いだけでなく、ビジネスとしても成り立たせなければいけない。「北陸三県」のいいものを扱う意味はそこにもあるという。

「富山県は関東、石川県は中部、福井県は関西への販路がこれまで一般的で、三県の流通はバラバラでした。そのため、北陸三県それぞれの商品がすべて集まっているところは、実はこれまでなかったんです」

[g]iftの店内の様子。各商品にはそれぞれ、丁寧な説明書きのポップが添えてある。
[g]iftの店内の様子。各商品にはそれぞれ、丁寧な説明書きのポップが添えてある。

流通網の統一がないため、三県すべてから商品を仕入れる問屋さんもない。最初は50社ほどの業者と取引を始めたが、すぐに工房や職人の元に直接足を運んで仕入れの交渉をすることになった。

一つひとつのやりとりは大変だった反面、つくり手と直接の関係性がつくれることがいまの [g]ift の財産となっている。

22世紀に残していく – 未来からの振り返り

[g]ift には300点以上の商品が並んでいるが、お店ではどのようなものを「いいもの」と考えているのだろうか。

「未来からの視点を大事にしています。北陸三県に関わるものであることは当然ながら、22世紀に振り返ってみたとき、伝統として残っていてほしいと自分たちが思うものかどうかを基準としています。同時に、これから伝統工芸になれそうな技術や商品の場合は、未来に残す手伝いを [g]ift でできればいいなと考えています」

石川能美市の「九谷青窯」。草花や蝶をモチーフに伝統工芸を現代風にアレンジしている。ウェブサイトでは各商品にまつわる物語が綴られている。
石川能美市の「九谷青窯」。草花や蝶をモチーフに伝統工芸を現代風にアレンジしている。ウェブサイトでは各商品にまつわる物語が綴られている。

「22世紀に残す」という想いが根底にはあるものの、今商品として売れなければ未来には残らず、伝統工芸にもならないのは事実。

そのため、経営者である中西さん、現場感と女性ならではの視点を持ち合わせる店長、東京にいるプロデューサーという異なる観点をもとに、毎月会議を行いながら商品をセレクトしていく。

どんなに品質がよくても、デザインのために誰かの手に届く機会を逸しては意味がない。「未来にきちんと残していくために、デザインに関して職人たちに提案していくのも我々の役目」と中西さんは話す。

[g]ift では、セレクトだけでなくオリジナル商品も扱い始めた。石川・福井・富山の県花が描かれているポストカードは、中西さんと縁の深い作家、上出恵悟さんとのコラボレーションだという。オリジナル商品についても「北陸のルーツがわかるもの、産地や生産者とのつながりがしっかりと説明できるものを置いていきたい」と話す。

富山はチューリップ、福井は水仙、石川は黒ユリがそれぞれの県花。中西さんの「植栽」の仕事の縁もあって、デザイナーの上出恵悟さんと一緒につくりあげた。これらをキーデザインに、オリジナル商品を展開していく予定。
富山はチューリップ、福井は水仙、石川は黒ユリがそれぞれの県花。中西さんの「植栽」の仕事の縁もあって、デザイナーの上出恵悟さんと一緒につくりあげた。これらをキーデザインに、オリジナル商品を展開していく予定。

雑誌のように、店舗を「メディア化」する

[g]ift を訪れるお客さんの9割は観光客だ。残り1割は地元の人だが、地元の人にもっとこの場所に足を運んでほしいと中西さんは考えている。

「観光客が多いため需要のほとんどはお土産なんですが、本来のターゲットは地元の人。地元の人が、北陸のいいものを買うなら [g]ift だと言ってくれること、好きになってくれることが目標です」

お店に入って、一番手前(一番左棚)を雑誌の「表紙」として商品を展示。季節に合わせて「北陸カレー総選挙」のような特集を組み、お店の陳列を編集している。
お店に入って、一番手前(一番左棚)を雑誌の「表紙」として商品を展示。季節に合わせて「北陸カレー総選挙」のような特集を組み、お店の陳列を編集している。

地元の人に、足を運ぶ度に真新しさを感じてもらえるよう、店内では「雑誌のように商品を展示する」工夫がなされている。定期的に特集を組み、読みもののようにいつ来ても店内を楽しめる仕掛けが散りばめられている。

地元の人たちが、 [g]ift を通じて自分たちの「足元」のこと、自分たちの地域のことを知ることで、北陸らしさや北陸のことを好きになってもらうことを目指しているのだ。

「扱っている商品は変わらなくても、切り口をちゃんと決めて特集するように展示しながら、地元の人を飽きさせないようにしています」

“[g]ift to local” – ものから始まる地域とのつながり

[g]ift では、産地やつくり手についての話が次から次へとスタッフの口から出てくる。ただのお土産屋ではなく、” [g]ift to local “の考えで「北陸三県の案内所」としての役目も担っている。

「金沢は、規模的にも一度訪れるだけで満足してしまう人も多い。だからこそ、次に行く地域のものを提示できる場所にしたいんです。すべての商品に物語があります。[g]ift から産地への流れを、どれだけつくれるかを意識しています」

[g]iftスタッフの竹浪さん。ものづくりの背景を学ぶために、中西さんと共に職人さんのもとへ足を運ぶこともしばしば。そこで得た情報をもとに、各商品を説明するポップを手書きしている。
[g]iftスタッフの竹浪さん。ものづくりの背景を学ぶために、中西さんと共に職人さんのもとへ足を運ぶこともしばしば。そこで得た情報をもとに、各商品を説明するポップを手書きしている。

中西さんは「オンラインで売れるものは接客不要でも売れてしまいますが、商品だけでは魅力が通じにくいものを、スタッフとのコミュニケーションを通じて知ってもらうことにこそ意味があるんです」と話す。

スタッフの竹浪さんは「伝え方次第でお客さんの商品に対する見方も変わってきます。ただ接客するのではなく、商品に込めた想いや産地のことを伝えることで産地や職人さんに少しでも興味を持ってもらえたら」と語る。来店した人たちに向けて、物語と思いを伝える「つなぎ手」としての価値がそこにはある。

人をつなぎ続ける、「北陸のいいもの」の語りべを目指して

「売れるから置く、でなく、自分たちが考えるいいものを置く。そうやって[g]iftのスタンダードをつくっていきたいです」と話す中西さん。(店内にて)
「売れるから置く、でなく、自分たちが考えるいいものを置く。そうやって[g]iftのスタンダードをつくっていきたいです」と話す中西さん。(店内にて)

「もの」を知ることで産地を知るきっかけをつくる。「すべてのものはメディアである」と話す中西さんは、お店に並べられた商品を通じて [g]ift から産地へと人をつなごうとしているのだ。

その根底には、クラフトマンシップが浸透している「北陸のいいもの」を掘り起こし、「22世紀に残していく」という想いがある。人と人、人と地域をつなぎ、より多くの人の会話になり続けることで、次第に文化へと形を変えいつしか伝統として継承されていく。

北陸三県のいいものが、人をつなぎ、地域の未来を編んでいく。その最初の語りべとして [g]ift があるのかもしれない。

[g]ift
石川県金沢市広坂1-2-18 中村ビル1F
076-222-2126

文:大見謝 将伍
写真:山田 康太

専門チームが、あなたのビジネスに合ったSquareの使い方をご提案いたします。